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相続税の申告をしないリスク| 追徴税や財産の差し押さえ、刑事罰について

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相続をきっかけに多額の財産を手に入れた方は、相続税の計算をして、その内容を税務署に申告する必要があります。納めるべき税額がなく申告義務が課されない方もいますが、義務のある方が申告をせずに放置しているとさまざまなペナルティを受ける危険性があります。

当記事ではこのペナルティやその後の影響について解説していますので、申告しないことのリスクをご理解いただければと思います。

 

追徴課税のリスク

相続税に限らず、納税義務を果たさず放置していると追徴税を課されます。追徴税には加算税や延滞税があり、本来納めるべき税額より大きな税負担が発生してしまいますので、気が付いた段階で早めに申告をすることが重要になってきます。

 

加算税の徴収

加算税とは、税制上の義務を履行しなかった者に対する制裁として課される税金のことです。

《 加算税の種類 》

  • 無申告加算税 :申告義務を果たさなかった者に対する加算税
  • 過少申告加算税:本来より少ない税額で申告した者に対する加算税
  • 重加算税   :財産を隠すなど悪質な行為をはたらいた者に対する加算税

申告をしなかった場合は「無申告加算税」が課税されます。適用される税率は下表の通りで、本来納税すべき税額の大きさと、申告に対応するタイミングによって変化します。

 

 

~50万円

50万円超~300万円

300万円超

税務署からの指摘前

5%

税務調査を受ける前

10%

15%

25%

税務調査を受けた後

15%

20%

30%

 

納税額が50万円以下なら最大で15%、50万円を超えて300万円以下の部分については最大20%、300万円を超える部分については最大30%もの税率が適用されます。
ただし税務署から指摘される前に自主的に申告を行えば、一律5%の無申告加算税で済みます。

なお、重加算税が課税されるような悪質な行為があった場合、申告をしなかった者には税額に関係なく40%の税率が適用されます。

 

延滞税の徴収

加算税とは別に「延滞税」も発生します。こちらは期限内に納税をしなかったことに対する利息分として徴収されるものです。こちらも早めに対応することで徴収税額は低く抑えることができ、逆に、対応が遅れるほど延滞税の場合は支払い額が膨らんできますので要注意です。

適用される利率は次の通りです。


(納付期限から2ヶ月以内の場合)
①年7.3% ②特例基準割合+1%
のいずれか低い方

2022年1月1日以降の特例基準割合は「2.4%」ですので、2024年の執筆時点においては年3.4%の利率が適用されます。


(納付期限から2ヶ月を過ぎた場合)
①年14.6% ②特例基準割合+7.3%
のいずれか低い方

2022年1月1日以降の特例基準割合は「8.7%」ですので、2024年の執筆時点においては年14.6%の利率が適用されます。

 

財産差し押さえのリスク

相続税の支払い義務があるにもかかわらず申告や納税をしなかった場合、加算税や延滞税も合わせた支払い義務が発生します。

その後もさらに支払いに応じない場合は国税庁によって財産を差し押さえられてしまいます。不動産などの財産を強制的に売却されてしまうリスクがありますので「放置しておけばいつか諦めてくれる」などと楽観的に考えてはいけません。

 

罰金刑や懲役刑を科されるリスク

相続税の申告をしないこと、必要な納税をしないことは犯罪にもなり得ます。そして有罪が確定すると罰金刑や懲役刑などの刑事罰が適用されることがあります。

 

無申告による犯罪の成立

相続税法では、正当な理由なく申告しないことを罪として定めています。

 

正当な理由がなくて期限内申告書又は第三十一条第二項の規定による修正申告書をこれらの申告書の提出期限までに提出しなかつた者は、一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。ただし、情状により、その刑を免除することができる。

引用:e-Gov法令検索 相続税法第69条

 

納めなかった税額などとは関係なく、単に申告をしないだけで成立し得る罪です。50万円以下の罰金、最悪の場合実刑に科される可能性もあります。

 

納税を免れることによる犯罪の成立

相続税法では、申告をせず納税を免れたなど特に違法性が強い行為に関して次の規定で罰則を適用しています。

 

期限内申告書又は第三十一条第二項の規定による修正申告書をこれらの申告書の提出期限までに提出しないことにより相続税又は贈与税を免れた者は、五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

引用:e-Gov法令検索 相続税法第68条第3項

 

ミスではなく意図的に申告をしなかった者などにこの規定が適用され、罰則も「5年以下の懲役」「500万円以下の罰金」と重く設定されています。

そして隠蔽工作など、さらに悪質性の強い行為で脱税をした者には次の罪が成立し得ます。

 

偽りその他不正の行為により相続税又は贈与税を免れた者は、十年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

引用:e-Gov法令検索 相続税法第68条第1項

 

この場合、最大で10年間もの実刑に処されるリスクがあります。また罰金刑も最大1,000万円と高額ですし、脱税額が1,000万円を超えるときはさらに大きな罰金刑を科すことも認められています。

 

申告手続がわからないときは税理士に相談

相続税の申告をしないことで、上述の通りさまざまなペナルティを受けることがあります。「申告のやり方がわからなかった」「申告期限を知らなかった」といった言い分も認められません。

そのため相続が発生した時点で税理士に相談し、相続税の申告が必要かどうかの判定をしてもらうことが大切です。申告が必要であるとわかったときも税理士に頼めば計算や申告作業を代行してもらえます。